愛知県犬山市の博物館明治村は、移築された明治期の歴史的建造物65棟が約100万㎡の丘陵地に立ち並ぶ、日本屈指の野外博物館です。同時に、朝ドラ・大河・時代劇映画のロケ地としても全国屈指の聖地で、2024年の朝ドラ『虎に翼』では4箇所が撮影に使われ、2025年大河『べらぼう』、過去には『花子とアン』『まんぷく』『るろうに剣心』まで、明治期の景観が求められるシーンの多くがここで撮られてきました。
このページは、明治村のどの建物が、どのドラマのどのシーンに使われたのかを、建物単位で振り返るためのガイドです。「あのシーンを見ていた時の気持ち」に戻るための地図として使ってください。
明治村で撮影された主なドラマ・映画作品(一覧)
まずは、明治村で撮影された主な作品と使用建物の対応を一覧で確認します。明治村は5丁目に分かれており、各建物の位置を頭に入れておくと、訪問の動線が組みやすくなります。
| 作品名 | 放送・公開年 | 使用建物 | 劇中の役割 |
|---|---|---|---|
| 朝ドラ『虎に翼』 | 2024年前期 | 内閣文庫 | 帝都銀行(寅子の父・直言の勤務先) |
| 朝ドラ『虎に翼』 | 2024年前期 | 北里研究所本館・医学館 | 明律女子専門部の外観 |
| 朝ドラ『虎に翼』 | 2024年前期 | 日本赤十字社中央病院病棟 | 夫・優三が入院していた病院 |
| 朝ドラ『まんぷく』 | 2018年後期 | 帝国ホテル中央玄関 | 大阪東洋ホテル(福子の勤務先) |
| 朝ドラ『花子とアン』 | 2014年前期 | 修和女学校(北里研究所本館) | 花子の通う女学校 |
| 朝ドラ『ごちそうさん』 | 2013年後期 | 複数の明治期建造物 | 大正〜昭和初期の街並み |
| 朝ドラ『半分、青い。』 | 2018年前期 | 明治村の街並み | レトロな商店街の背景 |
| 大河ドラマ『べらぼう』 | 2025年 | 明治村建造物(非公開含む) | 江戸期の街並み再現 |
| 映画『るろうに剣心』シリーズ | 2012年〜 | 聖ヨハネ教会堂ほか | 明治京都の街並み |
以下、建物ごとに、作品との結びつきとシーンの記憶を振り返っていきます。
内閣文庫が呼び戻す『虎に翼』帝都銀行のシーン
朝ドラ『虎に翼』を見ていた人にとって、もっとも記憶に残る明治村の建物が「内閣文庫」ではないでしょうか。村内5丁目に建つ、煉瓦造りの威風堂々とした外観。劇中では、寅子(伊藤沙莉)の父・猪爪直言と下宿人の佐田優三が勤める「帝都銀行」として、初回放送から繰り返し登場しました。
場所×シーン|直言が逮捕される朝の重い空気
帝都銀行は単なる職場ではなく、物語の転機の舞台です。共亜事件と呼ばれる贈収賄事件で、直言が出勤した朝に逮捕される──寅子が父の冤罪を晴らすために弁護士を志す原点となるシーンの背景に、この内閣文庫の煉瓦壁がありました。重厚な石段、列柱、整然と並ぶ窓。「明治の官僚機構の堅牢さ」と「個人がそれに飲み込まれる恐ろしさ」を、建物そのものが体現していました。
場所×登場人物|直言と優三、明律生たちが行き交う場所
帝都銀行は寅子の家族と弁護士仲間を結ぶハブでもありました。優三が下宿していたこと、直言の同僚として登場する穂高先生(小林薫)たちの会話、戦時下に銀行が「軍需を支える金庫」へと変質していく描写。建物の正面を撮るだけで、登場人物の社会的立場と時代の空気が一発で伝わってしまう──これが「内閣文庫」という選地のすごみです。
建物そのもの|旧赤坂の煉瓦造り、内務省管轄の文書庫
内閣文庫は1911年(明治44年)に東京・赤坂に建てられた、明治政府の公文書を保管する建物でした。設計は大蔵省臨時建築部の大熊喜邦ら。煉瓦造2階建ての対称的なファサードは、明治期の官庁建築の標準形を今に伝えます。明治村への移築は1971年。現在も内部に入って、当時の書架の趣を確認できます。
北里研究所本館・医学館が舞台になった『虎に翼』『花子とアン』の女学校時代
同じ明治村の中で、もう一つ複数の朝ドラに使われ続けている建物が「北里研究所本館・医学館」です。ドイツ・バロック風の腰折れ屋根と、整然と並ぶドーマー窓が印象的な煉瓦建築で、女学校・専門学校・研究所など「学びの場」のシーンに繰り返し選ばれてきました。
場所×シーン①|『虎に翼』明律女子専門部の外観
『虎に翼』では、寅子が通う明律大学女子専門部(法律科)の外観としてこの建物が登場しました。日本初の女性弁護士を生み出す物語の出発点であり、寅子が花江、よね、香淑、梅子、涼子といった同期と出会う場所。「ここで、はて?が育っていった」と思いながら外観を眺めるだけで、第1週〜第5週の記憶が一気に蘇ります。
場所×シーン②|『花子とアン』修和女学校
同じ建物が、2014年前期の朝ドラ『花子とアン』では花子(吉高由里子)が通う「修和女学校」として使われていました。明治末〜大正期の女学校の雰囲気を撮るときに、このドーマー窓のシルエットが何度選ばれてきたか。北里研究所本館は「明治・大正期の知のシンボル」として、複数作品の女学校・専門学校シーンを支え続けています。
建物そのもの|北里柴三郎博士が設立した伝染病研究所
北里研究所本館は、1915年(大正4年)に東京・白金に建てられました。ドイツでロベルト・コッホに師事した北里柴三郎博士が、自ら伝染病の研究拠点として設計を主導。腰折れ屋根、ドーマー窓、煉瓦壁の組み合わせは、当時の最先端医学研究施設の姿そのものです。建物の中も見学でき、北里博士の研究室や実験器具を展示しています。
帝国ホテル中央玄関と朝ドラ『まんぷく』大阪東洋ホテルの記憶
明治村でもっとも有名な建物が、フランク・ロイド・ライト設計の「帝国ホテル中央玄関」です。2階分の吹き抜けと大谷石の幾何学装飾。実物のホテルが東京・日比谷に建っていた頃そのままの威容で、明治村5丁目の高台に再建されています。
場所×シーン|安藤サクラ演じる福子が働いた「大阪東洋ホテル」
2018年後期の朝ドラ『まんぷく』では、この帝国ホテル中央玄関が、ヒロイン福子(安藤サクラ)の勤め先「大阪東洋ホテル」として登場しました。フロント、ラウンジ、宴会場の階段。福子が萬平さん(長谷川博己)と出会い、戦中・戦後の食糧難をくぐり抜けていく物語の起点が、この大谷石の柱の間に詰まっています。
場所×登場人物|萬平・福子の若き日が宿る空間
帝国ホテル中央玄関は、ホテルとして使えるほどの本物の空間として残されているため、テーブルの配置、光の入り方、列柱の影の落ち方まで、ドラマで見たそのままです。「あの長谷川博己と安藤サクラが、この柱の前で並んで立っていた」──そう思って正面玄関に立つと、まんぷくの第1週〜第3週の二人の若さがそのまま戻ってきます。
建物そのもの|フランク・ロイド・ライトの幾何学美学
帝国ホテル二代目本館は1923年(大正12年)9月1日、関東大震災当日に落成式が行われたことで知られます。設計はアメリカの建築家フランク・ロイド・ライト。大谷石とスクラッチタイル、テラコッタを組み合わせた装飾は、東洋の伝統と幾何学的モダニズムを融合した独自のスタイルでした。1968年に本体は解体されましたが、中央玄関部分のみが明治村に移築保存されています。
映画『るろうに剣心』が描いた明治京都の世界
朝ドラ・大河だけでなく、映画作品でも明治村は重要なロケ地になってきました。代表が大友啓史監督・佐藤健主演の『るろうに剣心』シリーズ(2012年〜)。明治初期の京都を舞台にした原作の世界観を再現するために、明治村は何度もロケ地として選ばれました。
場所×シーン|聖ヨハネ教会堂・京都七条通り
明治村の聖ヨハネ教会堂(旧京都河原町三条)は、明治40年に京都に建てられた本物の教会建築です。『るろうに剣心』シリーズでは、明治京都の異国情緒漂う街並みの一部としてこの教会堂周辺が活用されました。また、明治村の「京都七条巡査派出所」や「半田東湯」など、京都・東海地方の明治期の建物が集まる5丁目の街並みは、剣心と斎藤一が対峙する明治京都のシーンに重ねて記憶している人も多いはずです。
建物そのもの|本物の明治京都が、犬山にある
『るろうに剣心』を見たあと、京都に旅行して「あの街並み」を探しても見つからないことがあります。それもそのはず、原作で描かれた明治京都の風景は、現代の京都にはほとんど残っていない。だからこそ、各地から明治期の建物を移築した明治村が、映像作品にとっての「明治京都を撮るための場所」になってきたのです。リアル脱出ゲーム『るろうに剣心×博物館明治村 修羅潜む京都からの脱出』のような企画も繰り返し開催されています。
2025年大河『べらぼう』も明治村でロケ
2025年放送のNHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(横浜流星主演)でも、明治村が撮影地として使われています。蔦屋重三郎を主人公にした江戸期の物語で、吉原や日本橋といった舞台が中心ですが、明治村の建造物の一部が背景として活用されました。
場所×シーン|江戸期の街並み再現に明治村の建物群
『べらぼう』の撮影は、ワープステーション江戸(茨城県つくばみらい市)や、さいたま市・古河市・栃木県日光市などと並んで、愛知県犬山市の明治村でも行われました。江戸期そのものの建物は明治村には少ないものの、明治初期の和洋折衷の建造物群は、江戸末期から明治への過渡期を撮るのに適しており、市井のシーンや町割りの俯瞰ショットに使われています。
明治村側からの公式発表は限定的ですが、放送中の撮影目撃情報や、愛知県犬山市の観光協会からのリリースで、複数日にわたる撮影が確認されています。
朝ドラ『風、薫る』の鹿鳴館は、実は明治村ではなかった
2026年前期の朝ドラ『風、薫る』を見ていて「あの鹿鳴館のシーンは明治村で撮ったの?」と検索した人は、ここで一度立ち止まってください。結論から言うと、『風、薫る』の鹿鳴館シーンは明治村ではありません。
鹿鳴館の外観はCG(VFX)で再現
劇中で見上愛さん演じる主人公が見上げる鹿鳴館の建物外観は、実在した鹿鳴館の写真をもとに、CG(VFX)で再現されたものです。鹿鳴館は1883年(明治16年)に東京・内幸町に建てられ、1940年に解体されました。現存していないため、映像化には常にセットかCGが用いられます。
鹿鳴館の「黒門」はワープステーション江戸(茨城)
鹿鳴館前の門のシーンは、茨城県つくばみらい市の「ワープステーション江戸」武家通りゾーンで撮影されました。明治村の門ではありません。
明治村ロケがある『風、薫る』のシーンは…
『風、薫る』のドラマ公式ガイドや楽天ブックス版にも、明治村は撮影地として記載されていません。実際の主な撮影地は栃木県大田原市の大雄寺、塩谷町・日光市・福島県南会津町など。詳しいロケ地は朝ドラ『風、薫る』の聖地ナビ|大雄寺(大田原)からワープステーション江戸まで聖地巡礼ガイドでまとめています。
Googleでは「風 薫る ロケ地 明治村」という検索が多く発生していますが、これは「明治期=明治村」という連想による誤認が広がっているためと推測されます。明治村に行っても『風、薫る』のシーンの背景を見つけることはできない、という点だけ覚えておいてください。
明治村ロケ地巡り完全ガイド(アクセス・所要時間・必訪建物)
明治村は約100万㎡という広大な敷地に、移築建造物65棟が点在します。「ロケ地巡礼」を目的にする場合、行き当たりばったりでは1日で回り切れません。以下は最短の動線です。
アクセス|名古屋から約1時間
- 名鉄犬山線・各務原線「犬山駅」東口から、岐阜バス「明治村行き」で約20分、終点「明治村」下車すぐ
- 名古屋駅・栄から「明治村直行バス」あり(所要時間 約80分)
- 車:中央自動車道「小牧東IC」から約7分、東名高速「小牧IC」から約25分。村営駐車場あり(普通車1日1,000円)
営業時間・入村料(2026年)
- 営業時間:季節により変動(夏期9:30〜17:00/冬期10:00〜16:00など)。最終入村は閉村30分前。詳細は公式サイトを必ず確認
- 入村料:大人2,000円/65歳以上・大学生1,600円/高校生1,200円/小・中学生700円
- のりもの1日券付入村券:大人3,300円(村内SL・京都市電・村営バスが乗り放題)
ロケ地巡礼の最短ルート(3〜4時間コース)
- 1丁目:聖ヨハネ教会堂(『るろうに剣心』)
- 2丁目:北里研究所本館・医学館(『虎に翼』『花子とアン』)
- 3丁目:日本赤十字社中央病院病棟(『虎に翼』)
- 5丁目:内閣文庫(『虎に翼』帝都銀行)
- 5丁目:帝国ホテル中央玄関(『まんぷく』大阪東洋ホテル)
すべて徒歩で回ると、5丁目までかなり距離があるため、「のりもの1日券」付きで村営バスかSLを併用するのがおすすめです。撮影スポットとしての見応えが大きいのは、内閣文庫・北里研究所・帝国ホテル中央玄関の3棟。時間に余裕があれば聖ヨハネ教会堂と日本赤十字社中央病院もぜひ。
撮影マナー|建物内部は三脚禁止
明治村は基本的に屋内・屋外ともに撮影自由ですが、三脚・自撮り棒・ドローンは原則禁止です。混雑する建物内ではフラッシュも避けましょう。撮影禁止エリアは現地の表示に従ってください。
明治村周辺の観光・宿泊
明治村は犬山市にあり、周辺には国宝犬山城・有楽苑(如庵)・リトルワールドなど、半日〜1日かけて巡れる観光資源が集まっています。ロケ地巡りと組み合わせるなら、犬山駅周辺で1泊する旅程がベストです。
犬山市内の主な観光スポット
- 国宝犬山城(明治村から車約20分):日本最古の現存天守、木曽川を見下ろす天守からの眺望
- 城下町・本町通り:江戸期の町割りが残り、食べ歩きが楽しい
- 有楽苑(如庵):国宝の茶室、織田有楽斎の作
- リトルワールド:明治村と同じ系列の野外民族学博物館(明治村から車約15分)
明治村周辺の宿泊
明治村ロケ地巡りを1日コースで楽しむなら、犬山駅周辺・名鉄犬山ホテル・名古屋市内のいずれかに宿泊するのが現実的です。じゃらん・楽天トラベルから犬山温泉や名古屋市内の宿が検索できます。
まとめ|明治村は「思い出を呼び戻すロケ地」の聖地
明治村は、朝ドラ・大河・映画と、明治〜大正の景観が必要な作品にとって、現在の日本で最も信頼できる撮影地です。『虎に翼』の帝都銀行、『まんぷく』の大阪東洋ホテル、『花子とアン』の修和女学校、『るろうに剣心』の明治京都──どれも、現代の日本にはほぼ残っていない景観を、明治村だからこそ再現できました。
逆に言えば、明治村を訪れることは、複数の作品の「あのシーン」を一度に振り返れる、最も贅沢なロケ地巡礼でもあります。建物の前に立って、寅子が父の逮捕を見送った朝、福子が萬平さんとすれ違ったロビー、花子が女学校の門をくぐった瞬間を、それぞれ思い出してみてください。
そして、『風、薫る』だけは明治村で撮影されていないこと──このページの読者だけが知っている事実として、覚えておいてもらえれば。
▶ 2026年春クールの全作品ロケ地一覧はこちら:

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